平成29年度特徴的な事例紹介『高知大学インサイド・コミュニティ・システム(KICS)化事業』

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    取組内容

    高知大学

    高知大学のキャンパスは県中央部に集中しており、キャンパスから遠隔地にある地域の詳細なニーズ収集や、地域との密な情報交換に基づく連携活動を行うことが困難な状況にあった。そこで、高知県が設置する7か所の産業振興推進地域本部に大学教員(高知大学地域コーディネーター)が常駐し、官学一体となって隈なく地域と向き合うことで、地域と大学との域学連携や産学連携活動を実践する。この地域ニーズと大学シーズを効果的にマッチングする体制を、高知大学インサイド・コミュニティ・システム(Kochi University Inside Community System : KICS)と呼称する。

    平成29年度特徴的な事例紹介_高知大学

    平成29年度特徴的な事例紹介_高知大学(PDF:420KB)

    学生・教員インタビュー

    1

    《この方々に伺いました》
    高知大学域学連携推進部門長 吉用武史先生
    地域協働学部2年生      有光七月さん
    地域協働学部2年生      榊原桃伽さん


    高知大学のCOC全体の取組を教えてください。

    (吉用先生)高知県は、全国より15年先行して人口の自然減が始まり、高齢化の進行や中山間地域の過疎化、働き手となる生産年齢人口の減少など、多くの課題が山積しています。このような状況下、県内大学も課題解決のための取組を進める一方で、高知大学の所在地は県中心部に局在しているため、遠隔地域からの相談対応が困難な面がありました。しかしながら、地域に根差した大学として県全域的に活動を展開するため、各地域における地域連携のためのコーディネーター(UBC : University Block Coordinator)を4名常駐させ、彼らの居場所としてサテライトオフィスも県内七箇所に設置しました。この体制の最も特徴的な点は、UBCが県職員である地域産業振興監・地域支援企画員と共に地域と大学あるいは関係機関との連携を調整しているところにあります。県が有するネットワークや施策、大学が有する専門性や学生の若い力、これらを県と協力し合いながら課題に応じて使い分けることで、地域との適切な連携が展開できています。
    現場における連携に加え、COC採択時に新たに「高知県地域社会連携推進本部」を設置しました。これにより、COC実施責任者の理事(総務・国際・地域担当)や地域連携担当副学長を始めとした大学関係者と、高知県産業振興推進部長や地域産業振興監等の県庁関係者による定期的な連携協議により、県内の重要課題に対して大学が組織的に対応するための場が創出されました。「高知県地域社会連携推進本部」における協議事項は、学長を機構長とする「国際・地域連携推進機構」に申し送り、機構から全学に通達することで、教員や組織の地域活動を促進し、全学的なガバナンス体制の充実も図っています。
    また、教育組織改革においては、平成27年度の地域協働学部の新設に始まり、平成29年度の理工学部設置により全学改組が無事完遂しました。

    これまでのCOCの取組の中で顕著な成果について教えてください。

    (吉用先生)本学が平成28年度評価で「S」評価を頂いた要素として、「全ての学部で地域志向を念頭に置いたカリキュラム改革」をした点、「地域コーディネーターを有効に活用して課題解決につなげている」点をコメントとしていただきました。「地方総合大学の国立大学法人と地方公共団体の連携を進める場合の模範となりうる」とも評価いただき、大変励みになりました。特に地域コーディネーターの配置の効果は大きいと感じており、これまで4年経過した中で、多くの実績を作りました。
    例えば、中芸5カ町村(安田町、奈半利町、田野町、北川村、馬路村)が「日本遺産」に申請し、今年4月に認定されました。高知県単独では初めての認定であり、その中核に東部地域担当UBCがいます。認定において地域の歴史や風土に根差したストーリーづくりが重要であり、人文社会科学系の研究チームを編成しオーラルヒストリー調査を推進すると共に、住民ワークショップや文化庁との折衝も行いました。
    別の事例として、限界集落発祥の地である大豊町を含む嶺北地域において、近年、若者の移住定住の流れが起き始めており、嶺北地域担当UBCがその一翼を担っています。地域に若者を呼び込み、起業や事業創出の仕組みづくりについて自治体等と意見交換を重ね、学生・若者と地域との連携プラットフォーム構想の立案と、本構想の中核となる「NPO法人ONEれいほく」(以下、「ONEれいほく」)の設立を支援しました。2016年6月からのONEれいほくの活動開始以降、若者の訪問流入人口は延べ1,000人以上、うち13人が嶺北地域に移住しました。
    他にも多くの事例はありますが、いずれも共通している点として、コーディネーターとして地域との繋がりを重視し、云わば地域の仲間の一人として認識していただけるよう各UBCが尽力してきました。事業開始直後、各UBCに非常に多くの相談が寄せられました。4年近く経過した現在においても相談の数は減少することなく、むしろ地域の各種委員会の委員としてもUBCにお声掛けいただくことが増え、地域に定着してきたのではないかと感じています。
    一方で教育改革においては、学部改組の成果はすぐに表れるものではないですが、地域関連科目を事業開始時から倍増以上(158科目→359科目)、初年次必修科目「課題探求実践セミナー」の全学必修化を行いました。その結果として、学生の地域の大学としての認知度向上(43.7%→67.9%)、地域関連科目受講による高知県理解度、地域再生・活性化に関する理解度の増加、他多数の地域に対する理解・関心の向上が学内アンケートにおいて見出されました。これらもCOC事業の大きな成果といえます。


    今後の事業展開について教えてください。

    (吉用先生)本学は平成27年度にCOC+に採択されており、現在、高知県内の高等教育機関と共に学生の県内定着率向上に向けて取り組んでいます。COCにより増設した地域関連科目を、それぞれ地域との関与度合いに応じてフェーズ1〜5に振り分けていただき、学生が系統的に地域関連科目を受講できるようにしました(フェーズ1:地域を知る、フェーズ2:地域をもっと知る、フェーズ3:地域と会う、フェーズ4:地域を体験する、フェーズ5:地域と協働する)。加えて、フェーズ1〜4を一定数受講した学生に「地方創生推進士」の称号を付与し、高知県の地域課題について学修した証であり県内での活躍が期待できることから、県内企業への就職を呼び掛けています。
    また、COCの要である4名のUBCについても、既に欠くべからざる存在となっていることから、平成30年度からパーマネント雇用に切り替えるようテニュアトラック審査の準備をしています。当初のUBCのミッションであった地域と大学との橋渡し役としての機能は十全に果たしつつ、近年は地域と地域を繋ぐコーディネーターとしても活躍しており、UBCの長年にわたる活動の成果の新たな一面が表れ始めています。今後、パーマネントとなり一層腰をすえて活動することで、地域の中核人材として活躍してくれることを期待しています。

    学生インタビュー:地域協働学部に入った動機と、活動内容について教えてください。

    (有光さん)私は高知県の東部に位置する、安芸郡芸西村出身で、高校は高知市の追手前高校に進学しました。高校進学後、これまで住み慣れた地元を離れて感じたことは、高知県全体に関してもっと知りたいという思いでした。特に、中山間地域や高知県の西部地域に関しては、中々赴く機会が少なく、知らない地域がたくさんありました。そのような中、高知大学にある地域協働学部の存在を知り、地域での実習を通して高知全体をもっと知りたいと思い、志望しました。
    活動内容についてですが、東西に長い高知県で最も西部に位置する、大月町柏島にあるNPO法人黒潮実感センター(以下、実感センター)に受け入れていただいています。この実感センターでは、小学生や未就学児童を対象とした環境教育を行う「海の寺子屋」事業(以下、寺子屋事業)や、環境を保全し活かす活動など、様々な取り組みを行っています。実感センターの方の「寺子屋事業をもっとたくさんの地域で展開していきたい」という思いもあり、その思いを実現するため、寺子屋事業と高知市の子どもたちを繋ぐ、橋渡しの活動を行うことにしました。具体的には、高知市にある高知大学附属幼稚園で、寺子屋事業を実施する企画を考えています。プロジェクトメンバーは10名おり、その中で私はプロジェクトリーダーとして全体のマネジメントを任されています。

    (榊原さん)私は、高校までは鹿児島県に住んでいました。生まれ育った故郷が大好きで、いつかこの鹿児島をもっと元気なまちにしていきたいという思いが、地域協働学部を目指すきっかけとなりました。地域協働学部の実習地は、私がこれまで住んでいた地域と共通点が多く、課題も似ています。ここで学ぶことで、鹿児島の活性化に貢献できるのではないかと考え、この学部を志望しました。
    活動内容についてですが、私も有光さんと同じく、実感センターに受け入れていただいています。私達のプロジェクトは、寺子屋事業と実感センターのパンフレットづくりの2つの取り組みを行っています。どちらも基本的には全員で取り組んでいますが、私は主に実感センターのパンフレットづくりを担当しています。実感センターの方や教員からご指導いただき、企画段階から制作作業まで学生の手で行っています。


    学生インタビュー:地域で活動する中で、どのような心境の変化がありましたか?

    (有光さん)相手の立場に立って物事を進めるようになりました。現在私は、高知大学附属幼稚園の副園長さんと、寺小屋事業の実施について連絡を取り合っています。当初は、先方も地域協働学部の教育や実感センターのことを正しく理解しておらず、こちらも幼稚園の仕組みや事情を把握しきれていなかったため、互いに認識のズレがありました。何度か話を重ねる内に、だんだんとズレを埋めることができ、平成29年12月末には寺小屋事業のプレ企画を実施させてもらえることが決まりました。地域住民や団体から受け入れてもらうには、こちらの意見を投げかけるだけではなく、その地域や人を知り、寄り添い合うことが大切だと感じました。また、プロジェクトでは、メンバーのスキルを活かすことを念頭に置いて、仕事の割り振りをするようになりました。私はリーダーという立場から、常に全体を見るようにしています。その際に、誰がどのようなことに興味があり、何ができて、どういったことをしたいのかについて、特に気にするようにしています。自分の思いだけでなく、メンバーの立場に立って企画を進めるようになりました。指導教員の石筒先生と吉岡先生のフォローもあり、私達のチームは全員で同じ目標に向かい、お互いを高め合いながら成長してきていると感じています。

    (榊原さん)「地域に入らせていただいている」という気持ちを持って活動するようになったことです。実際に地域に入ると、暖かい意見だけでなく、厳しい意見をもらうこともあります。その地域ごとの課題や住民の方々の思いも様々で、学生だけでは解決できない部分もあります。一方で、実感センターのセンター長である神田さんは、私達を受け入れてくださり、フォローしてくださっています。地域で活動するということは簡単なことではありませんが、地域住民や団体が協力してくれているおかげで、私達は活動させてもらっているのだと実感しました。神田さんをはじめ実感センターの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。周囲に対する感謝の気持ちを持ちつつ、どうすれば地域と良い関係づくりができるのかを念頭に置いて活動するようになりました。この経験から、私は自分自身の力不足に気付き、卒業後すぐ鹿児島へ戻ることを考え直すようになりました。故郷を元気にするためには、もっと多様な考えを持った人達と出会い、地域活性を学ぶ必要があります。また、これまでの実習を通して、「デザインや情報発信に関する活動がやりたい」という気持ちにも気付きました。そのためには、もっと専門的な知識を勉強しなければなりません。就職したい企業や地域など、具体的な希望はまだありませんが、もっと幅広い地域へ視野を広げようと思っています。いつの日か故郷に戻り、今よりもっと素敵なまちにしていけるように、これからもたくさんの経験と知識を蓄え成長していきたいです。

    平成29年度『特徴的な事例』選定基準


    日本学術振興会「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業委員会」による、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)平成28年度評価」において、【S】評価(計画を超えた取組であり、現行の努力を継続することによって本事業の目的を十分に達成することが期待できる)を受けたCOC採択機関(既に特徴的な事例紹介を実施している機関を除く)より選定し、インタビューを実施しましたので「特徴的な事例」としてご紹介させて頂きました。




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