平成29年度特徴的な事例紹介:信州を未来へつなぐ、人材育成と課題解決拠点「信州アカデミア」

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    取組内容

    信州大学

    本事業は、中山間地域の存続問題や環境共生社会の構築など信州地域の抱える将来課題を地域との対話等を通じて設定し、 〔1〕“地域の経験知”と“大学等の知”を融合による課題解決研究や教育手法の開発を進めます。その成果を〔2-1〕地域人材に対する学び直しの学習カリキュラムとして体系化し、「地域戦略プロフェッショナル」人材を育成する社会貢献事業を実施します。 また、〔2-2〕学内の地域志向教育として、地域課題研究等の成果や連携自治体講師・育成した地域人材を講師に活用し、リアルな地域課題学習を展開します。これらを推進するために〔3〕全学的な連繋組織「地域戦略センター」を整備し、本学が取り組む地域課題の解決や人材育成のための知の循環システム「知の森」プラットフォームの構築を進めていきます。

    平成29年度特徴的な事例紹介_信州大学

    平成29年度特徴的な事例紹介_信州大学(PDF:467KB)

    学生・教員インタビュー

    インタビュー

    《この方々に伺いました》
    信州大学 学術研究院 総合人間科学系 准教授 林靖人先生
    信州大学研究推進部産学官地域連携課     鵜澤尚弘さん


    信州大学のCOC事業の中で「課題解決知の形成」とありますが、どのような課題設定をされているのでしょうか?

     私達が取り組んでいるCOC事業では、様々な切り口から地域ニーズを収集し、課題設定を行っています。具体的には、連携協定を結んでいる自治体との協議会でデータ収集を行ったり、県民3000人アンケートを実施したり、行政の方へのヒアリング調査を行ったりするなどして、地域ニーズの収集をしていました。
     また、大学と地域が繋がり、情報を共有する「対話手法」を開発し、実施しています。大学の研究者・学生と地域の実践家達が集い、ワークショップを行っています。こちらで地域課題に関する様々なキーワードを用意し、そのキーワードを元に皆さんと対話をします。対話を通じて様々な考えを持つ人たちと意見を共有し、自分の考えや知識を可視化できるような手法を凝らしたワークショップづくりをしています。
     これらの取り組みを元に、「中山間地域」、「防災減災」、「歴史芸術文化」、「環境共生」、「健康長寿」、「多文化共生」の6つのテーマを課題として設定しています。

    第二段階の人材育成フェーズでは主に2つの取り組みをされているそうですが、どのような内容なのでしょうか?

     一つ目は、平成26年から始動した「地域戦略プロフェッショナル・ゼミ」(以下、プロゼミ)です。冒頭でも話した6つの課題から優先課題を3つ選出し、それぞれの課題に沿ったカリキュラムを用意して受講生を募集しました。定員は各コース30名までで、受講料は一人20,000円です。知識を得るだけでない地域での実践演習を交えることで、大学の「研究知」と地域の「実践知」をかけ合わせた、密度の濃いプログラムとなっています。
     プロゼミは、移住者(Uターン・Iターン)をメインターゲットにしています。受講生の傾向としては地域で働く30〜40代が中心ですが、高校生や県外からくる大学生もいます。このプロゼミを機に改めて地域を学び直すとともに、受講生同士や講師との人脈づくりに役立てられています。このプログラムを通して、地域課題解決のパイオニアや、地域コーディネーターの育成を目指します。
     二つ目は、プロゼミでスキルを高めた修了生を、大学の地域志向教育に講師として参加してもらう「地域循環型教育」です。プロゼミでの学びをアウトプットし、学修の深化を目的としています。加えて、密度の濃いプログラムを受けた講師の話を聞くことにより、刺激を受ける学生も多いです。大学と地域の垣根を超えた交流から地域を知り、地域へ出てみたいという興味を持つきっかけにもなります。このような循環型の教育を行うことが、私達のCOC事業の特徴の一つと言えます。
     また、プロゼミや循環型教育によって、地域課題解決人材や支援者、地域志向教員や学生など合わせて300人ほどのネットワークが構築されました。このネットワークを、本事業の第三段階の基盤である「知の森プラットフォーム」と呼称しています。4年前から蓄積されてきたこのネットワークは更に繋がりを深め、プロゼミ修了生に講座運営を手伝ってもらったり、地域の取り組みに一緒に参加したりすることもあります。更に、この事業の中で習得した知識とネットワークから新たに職を得る人や、実際に事業を興す人も増えてきています。


    大学院で半年程度のインターンシップを行っているとのことですが、具体的にどのような取り組みでしょうか?

     大学院人材育成センターでは、キャリアパスインターンシッププログラムと、高度人材育成インターンシッププログラムの2つの取り組みを実施しています。キャリアパスインターンシッププログラムでは、企業でのインターンシップを通じて幅広い知見・経験・人間力などを養い、実社会の様々な分野で活躍する人材の育成を目的としています。高度人材育成インターンシッププログラムでは、充実した事前・事後教育と、一人一人に合わせた実習テーマにより、実社会で求められる幅広い視野を持った人材の育成を目的としています。それぞれ就職目的・スキル向上目的と明記していて、一部を単位認定可するというインセンティブを設定しています。
     プログラム内容は基本的に企業側に設定してもらいますが、企業側の要望によっては私達と一緒にプログラムを構築する場合もあります。全ての学生が希望した企業に行けるわけではありませんが、事前に学生と企業とのマッチング会を設け、そこで学生の希望をとり企業へ繋いでいます。キャリアパスインターンシッププログラムでは、インターンシップ先の企業へ就職する学生が47.8%もいます。インターンシップ受け入れ企業からは、「当社にとって非常にメリットの多いインターンシップだった」「企業にとっても学生にとってもメリットのある制度だと思う」など多数の感想をいただいています。

    学外の連携体制についてお伺いします。産学官連携において、具体的にどのような取り組みをされていますか?

     信州大学では、先進的でかつ独創的な研究を行う先鋭領域融合研究群を設定しています。5つの研究所からなるこの研究群では、学際的な研究が行われており、例えばあるプロジェクトでは、医学・工学・繊維の研究者が連携して実施されています。
     また、次代の研究所を目指す5つのセンターを設置し、専門性に特化した独自の研究を展開しています。例えば、長野県南部の飯田市では、自動車関連産業の集積が見られ、そこで蓄えた技術を元に、航空宇宙産業へと展開しています。こうした地域からの積極的な働きかけにより、本学の研究者とのマッチングも進み、航空宇宙システム研究センターへと繋がりました。
     先生領域研究群の研究の中には、「着ているだけで血圧や血糖値を高精度測定できる衣服」のような、近い将来に社会実装可能な製品も生まれています。ただし、これらの製品を商品にするためには、技術開発だけでなく、法律や制度の問題に対する専門的知見も必要となります。そこで、法律の研究者も連携し、これらの課題に向き合っています。
     このように、企業や地域から寄せられた要望に対して、大学内の様々な分野の研究者が連携して、対応する仕組みを構築しています。


    自治体や地域とはどのような連携体制を構築していますか?

     これまでは、連携協定を結んでいる自治体から職員を地域連携研究員として大学に派遣してもらい、地域課題解決のための共同研究をしていました。今は少し仕組みを変えて、連携コーディネーター(以下、CDN)制度というものを作っています。地元の金融機関や自治体の方に委嘱しており、現在は300名を超える方にお願いしています。CDNには主に2つの役割があります。一つは、地域ニーズを大学へ投げかけてもらうことです。企業や地域から相談を受ける際、大学のシーズとマッチしそうな案件だった場合には、大学に報告してもらうようにしています。これまで報告していただいた相談内容としては、新事業を立ち上げるにあたり高度な専門知識が必要な時やインターンシップの募集など、様々な案件が寄せられました。二つ目は、大学内の研究シーズを適切な部署や団体へ接続してもらうことです。大学に集まった地域での研究・教育要請を、学内のCDNが整理して自治体CDNへ投げかけ、自治体CDNの方から庁内関係者や関連団体へ繋いでもらうようにしています。これらの連携により、新事業の立ち上げやインターンシップの実施など、寄せられた案件をスムーズに解決できるようになりました。

    大学内の連携推進体制はどのように構築していますか?

     従来、異なる役割を担っていた学術研究推進機構と産学官連携推進機構を、平成28年度に統合し、「学術研究・産学官連携推進機構」としました。この2つの機構を統合したことで部局分野横断的な取り組みを展開できるようになりました。また、産学官民連携の窓口として新たにステーション(以下、ST)を設置しました。STは信州大学の5つのキャンパスごとに設けており、キャンパスが位置するエリアから上がってきた相談案件にそれぞれ対応するようにしています。ただし専門性が大きく外れた場合は、他のSTと相談して適切な部署に繋いでもらうこともあります。そのため、各本部では毎週・隔週でミーティングを行い、密に情報を共有するようにしています。

    文部科学省のCOC中間評価にてS評価に至った要因についてはどう考えられていますか?

     私(信州大学 学術研究院 総合人間科学系 准教授 林靖人氏)が心理学でブランディングを研究していることもあって、事業イメージの構築・浸透のための『魅せ方』についてはかなり綿密に構築するようにしていました。私達は情報発信の媒体として、Facebook・ニュースレター・HPなどを主に使っていますが、中でも特にFacebookとニュースレターは頻繁に更新・制作しています。Facebookは週に2〜4回ほど更新し、タイムリーな情報を投げかけるようにしています。ニュースレターは「信州アカデミアNEWS」という冊子を2ヶ月ごとに制作しており、職員の手でデザインから構成まで行っています。そのような兼ね合いもあって、事務補佐員を採用する際にはデザインスキルを持った人を採用するよう工夫しています。また、学長や理事からCOC事業について深く理解をいただき、支援していただける環境があったからこそ、この事業を発展させることができたと考えます。このような点が、今回S評価を受けた要因なのではないかと考えています。

    今後の事業展開について教えてください。

     信州大学では、今年度から全学横断特別教育プログラムとして「ローカル・イノベーター養成コース」(以下、本コース)を立ち上げました。本コースでは、地球環境マネジメントや地域社会、グローバル社会の未来を創造するための実践力を持った高度なキャリア人材の育成を目的としています。平成29年度以降の信州大学の学部入学者を対象に、1年次後期から2〜3年間に渡って実践演習を交えた様々なカリキュラムを受講してもらいます。これまでのCOC事業をベースにした密度の高いカリキュラムとなっているので、単位や成績状況を加味したうえで選抜し、各年度20名程度の採用を予定しています。採用された学生は、メンター教員による履修アドバイスや課外活動選択時の相談など、円滑にカリキュラムを修了できるようサポートを受けることができます。また、自治体・団体・企業・地域コミュニティーとの協働による様々な実践演習から、大学を越え社会に一歩踏み込んだ質の高い経験の蓄積・ネットワークの構築が可能となっています。本コース修了後の就職ビジョンとしては、新たな仕組みを作る学校教員や地域に飛び出し自ら動く公務員、地域の業界を引っ張る団体職員など、様々なパターンを想定しています。本コースを通じて地域の魅力を知るきっかけとなり、「これからも長野に残りたい」と言う学生が増えると、嬉しい限りです。

    平成29年度『特徴的な事例』選定基準


    日本学術振興会「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業委員会」による、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)平成28年度評価」において、【S】評価(計画を超えた取組であり、現行の努力を継続することによって本事業の目的を十分に達成することが期待できる)を受けたCOC採択機関(既に特徴的な事例紹介を実施している機関を除く)より選定し、インタビューを実施しましたので「特徴的な事例」としてご紹介させて頂きました。




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